[URUSHI] について
///// うるしは地球がくれた天然素材であり、地球に優しい塗料です /////
漆(URUSHI) と聞くと皆さんはどんなイメージを持たれるでしょうか?

漆の歴史(漆の日) 漆の性質 塗料としての漆 漆かぶれ 村小の児童・当店訪問 これからの漆

・漆の歴史

漆の歴史は古く、石器時代の木刀にも漆が使われていたとも言われています。
1971年、福井県三方郡三方町の縄文時代前期 (約5,500年前)の遺跡の「鳥浜貝塚」で多くの漆器具が発見されています。特に赤色漆塗櫛 (あかいろうるしぬりくし)は漆が塗られた遺品としては日本最古のものとして有名でした。
近年、島根県松江市の夫手遺跡からは6,800年前の 漆液容器が発見されたり、新潟県でも1997年に三島郡和島村の大武遺跡の縄文時代の地層から 発見されたひも状の漆製品が「炭素14年代測定法」によって、6,600年前のものであることが 判明しました。表面には赤色顔料を加えたベンガラ漆を塗布してあったそうです。

古墳時代に入ると柩の内側に漆を塗り埋葬したり、武士が登場してくると鎧や刀の鞘にも漆が 使われていました。
木と木の接着に漆と小麦粉を混ぜて使っていましたから、漆は生活の中で かかせないものだったわけです。

11月13日は「漆の日」です。
文徳天皇の第一皇子惟喬(これたか)親王が、京都嵐山法輪寺に参篭(さんろう・こもって祈る事) され、本尊虚空菩薩より、ご伝授、ご教示を受けて「うるしの製法」、「漆器の製造法」を完成し、 日本国中に広めたものといわれており、塗りをする場合に使う継ぎ漆を[コクソ]というのは、 虚空蔵から転化したものだといわれております。 親王が参篭された満願の日である11月13日に報恩講(漆祭り・火焚祭)を設けて、供養するのが 慣わしとなっております。


  《漆かきを終えた漆の木》
・漆の性質

漆はアジアでしかとれませんが、漆の採取法は 漆の木に傷を付けて採取します。
人が傷を負ったときにカサブタがはり出血を 止めるのと同じ様な理屈で、漆の木も 傷を負うとその傷を塞ごうとし、漆の液を出し、空気中から酸素を取って硬化させるのです。
漆が乾くというのは一種の化学反応 (酸化現象により液体から固体に変化) です。

専門的にうるしは、水分・含窒素物・ゴム質・ウルシオールなどの、ほぼ4物質で構成されて おり、主成分であるウルシオールの含有量によって堅牢度が決まります。
漆が乾くのは、うるしのゴム質の中にあるラッカーゼという酵素が空気中より酸素をとって、 ウルシオールを酸化重合させて固体に変ずる酵素反応なのです。

これを昔の人が見つけて物を丈夫にするために使用したのが 漆と人間の関わりの始まりなのではないでしょうか。
丈夫にするために使った漆は防虫効果も あると言うことで、柱や天井にも漆が塗られるようになりました。

・塗料としての漆

現在でも漆の保存には、空気を入れないように密封してあります。
ここが合成樹脂塗料と違う ところで、合成樹脂塗料は漆と違って長く保存できません。サブタイトルに「うるしは地球がくれた 天然素材であり、地球に優しい塗料です」と書いたのは、合成樹脂塗料の多くが有機溶剤を含み、 乾かす過程に熱を必要とするので石油資源を消費し極端に言えば地球の温暖化というところへも つながっていくのです。
漆は空気中から酸素を取って化学反応をおこすと書きましたが、 空気中に酸素の多い梅雨どきが一番硬化するのです。ですから洗濯物が乾くのとはちょっと違います。
漆器の産地の多くは日本海側や盆地に多く、北海道にはないのはその辺の理由からだと思います。

漆の木は、 いつまでも漆が採れるわけではなく、老木になると漆が採れなくなります。
当、 小杉漆器店内には漆かきを終えた漆の木 も置いてあります。

“漆の美しさは「ふっくら感」「しっとり感」「深み感」である”

漆は保湿性があり、表面張力の大きさにより人の目にはこのように感じます。

塗装をやられている方からもっと詳しい説明をしてほしいというご意見がありましたので、 付け加えます。

漆の塗膜には保湿性があり、この保湿力が漆をいつまでもしっとりさせています
。 漆のふっくら感は漆の表面張力の大きさと凝集力によるもので、凸面になっていれば光線の 接触角が大きくなり、漆塗膜は丸くふっくらとして人の目に映るのです。
また、漆の深みは漆の表面張力の大きさと関係があり、凸面になっていれば光が入って戻ってくる 屈曲率が高くなり、この屈曲率の高さが見る人に深み感を与えるとされています。

塗料としての漆の特長は
塗り面が耐水性、耐酸性、耐アルカリ性が大きく堅牢である。
塗り面の光沢度が落ち着きのある優雅さがあり、上品な温かさを与える。
塗る際には、他の塗料のように溶剤を用いないで塗膜ができ、乾燥時間をある程度自由に伸縮でき、 他の物質とよく混和し、濃さを自由に調節できる。
しかし、取り扱う上で、かぶれることや吹き付け作業が困難なこと、取り扱いの経験が必要な ことといった欠点もあります。

・漆かぶれについて

うるしが乾く時、化学反応で液体から固体へと変化しますが、その時にうるしの成分と 皮膚タンパクが反応し、炎症をおこします。これがカブレで、かぶれると強いかゆみを伴い、 水泡ができます。私達もかぶれないように、うるしが乾く前にふき取ってしまいます。
漆塗りの漆器はもう固体になっていますから、かぶれることはありませんが、特別うるしに 対して皮膚の弱い人は仕上がったばかりの新しい漆器に対して、軽いカブレの症状がでることも あるので、当店では仕上がり後、2・3日してから店に出すようにしています。


・これからの漆

平成11年5月14日、新潟市の大形中学の1年生の生徒が移動教室の授業で当店を訪れ、 漆や堆朱について勉強していきました。
村上には観音寺というお寺に日本最後の即身仏 (ミイラ)が安置されており、最後に漆を飲まれて即身仏になられたということを聞いたある 男子生徒が、「ビタミン剤のように漆を使った薬はないですか?」と質問しました。私は 「漆はタンパク質に反応して炎症をおこすから薬はないよ」と答えたのですが、漆の問屋さんに 聞いてみると、ドイツでは国家プロジェクトとして漆に含まれる酵素のラッカーゼを利用しての 抗ガン剤の研究が進んでいるそうですし、中国でも漢方薬としての漆の利用の研究が進んでいる そうです。
またある生徒は生漆のにおいをかいで、「これを殺虫剤とかに利用できないものか」 とすばらしい意見を話してくれました。
漆は塗料としてだけでなく、これからは色々な方面への 利用の研究がすすむと思われます。
    《村上小学校の5年生児童》



  店内が暖かかったので少し曇っています

・村上小学校の児童

平成13年12月20日、村上市立村上小学校の5年生が24名で堆朱の勉強に来ました。
村上小学校では「新たな関わり合いを求めて」ということで、各学年ごとにテーマを決めて 取り組んでおり、5年生は「堆朱の輝きを求めて」ということで、堆朱について自分達で 事前にホームページで調べたり、今日のように実際に各お店に行き聞き取り調査をしたりし、 それをまとめて3月に発表します。1月には彫りの体験もします。
地元だけあって家に堆朱がある子や見慣れている子がほとんどで、質問も「伝統工芸品」とは? とか、手入れの仕方、漆の事、製品が仕上がった時の気持ち、とか鋭い質問が多かったです。 「地元の伝統工芸に触れ、伝えてほしい」それを願っています。


☆ 平成13年度 村上巡検で当店を訪れた学校 ☆

・村上市    村上第一中
・西蒲原郡   西川中
・山北町    山北中

≪西蒲原郡西川中の生徒の礼状より≫
「事前学習の時の資料などでは難しい言葉などが使われていてよくわからなかったことも、細かく、 私達が理解できるように説明してくださったので、本当に漆器という物はどんな物かがわかりました。 それにうるしの木というものも初めて見ました。」

≪山北町山北中の生徒の礼状より≫
「堆朱の手順なども教えて頂き、小さな作品でもとても値段が高いということを知りました。
堆朱で使用する漆はきずをつけて液体を出すということや、始めは液体の時から赤いと思っていた 液は、無色だということもわかり、大変勉強になりました。」

村上市村上第一中を初め、各学校から礼状を頂きました。村上巡検で当店を訪れたは生徒達は とても礼儀正しく、真剣に質問します。私も新しい感激を与えることができればといつも思って います。


☆ 平成13年度 社会科・伝統産業の勉強で当店を訪れた学校 ☆

・朝日村    朝日みどり小学校
・村上市    村上小学校


☆ 平成14年度 村上巡検で当店を訪れた学校 ☆

・山北町    山北中学校


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