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新井亜希 医師

「広報せきかわ」2011年4月号より

パーキンソン症候群とパーキンソン病

 「パーキンソン」という言葉を聞いたことがある方はたくさんおられるでしょう。では「パーキンソン症候群」と「パーキンソン病」の違いをご存じですか。一言で言うと「パーキンソン症候群の一部がパーキンソン病である」ということです。まず、「パーキンソン症候群」について説明しましょう。

 原因は何であれ、人間の動きを制御する錐体外路(すいたいがいろ)という神経系統に不具合が生じると、「手足がふるえる、動作がゆっくりになる、筋肉の緊張が高まり動きがこわばる、体の姿勢やバランスを制御できない」といった症状が見られるようになります。こういった症状のことをまとめて「パーキンソン症候群」と呼びます。

 「パーキンソン症候群」の原因となる不具合には様々なものがあり、脳血管障害、脳腫瘍、正常圧水頭症、中毒、脳炎、薬剤の副作用、内科的疾患、神経変性疾患(神経細胞の変性によって進行性に悪化する病気の一群)などが含まれます。これらのうち、神経変性疾患の、そのまた一部が有名な「パーキンソン病」なのです。「難しい話には興味が無い」と思う方がおられるかもしれませんが、これがとても重要なことなのです。

 この原稿を最初から読み直してみて下さい。いろいろな病気が原因で「パーキンソン症候群」という症状を生じることがあるということは、原因を見極めて、適切な治療を行えば改善するかもしれないということなのです。例えば、薬剤の副作用による「パーキンソン症候群」は、原因薬剤を中止することによって多くの場合、症状が改善します。「パーキンソン症候群」の原因になる神経変性疾患と呼ばれる病気の一部が「パーキンソン病」であるわけですが、困ったことに、多くの方が「パーキンソン」と聞いただけで「パーキンソン病」と思い込んでしまうようです。

 「パーキンソン症候群」が生じた場合、まずは、それがどんな病気によって生じているのか、治療できる病気が隠れていないか、神経変性疾患によって生じているのであれば、内服治療によって症状の改善が期待できる「パーキンソン病」なのか、それ以外なのか、を十分に見極めて、適切に対応することが重要です。

 「パーキンソン」かも知れないと思った場合には、かかりつけ医に相談した上で専門医を受診されることをお勧めします。