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小児科部長 今田 研生

「広報せきかわ」2016年4月号より

B型肝炎ワクチンの定期接種化について

 厚生労働省の発表によると、今年の四月以降に生まれる0歳児に対して、十月から予防接種法に基づく定期接種でB型肝炎ワクチンを接種する方針とのことです。定期接種とは、市町村が費用を負担して原則無料でワクチンが受けられるということです。生後二ヶ月、三ヶ月、七〜八ヶ月に各一回毎、合計三回の皮下注射での接種が標準となります。

 今までも、B型肝炎ワクチンはウイルスに感染している母親から生まれた新生児には母子感染を防ぐ目的で医療保険が適用されて接種していました。さらに母子感染の予防以外でも費用を負担すれば任意で接種は受けられましたが、今回定期接種化されればより受けやすいワクチンの一つに加わります。

 B型肝炎ウイルスは、血液やその成分との直接の接触によって感染します。その感染をワクチン接種によって予防することにより、その後に生じる可能性のある肝硬変や肝細胞癌の発生を少なくする効果が期待されます。

 B型肝炎ワクチンは世界の多くの国々で広く接種されている比較的安全性の高いワクチンですが、日本では長い間無料で受けられなかったことから、ワクチン接種が進みませんでした。これから生まれてくる子供たちは、受けられる予防接種がたくさんあってスケジュールを組むのが一段と大変になりますが、これは本当に喜ばしいことなのです。

 一方で大変残念なことですが、現在我が国のB型肝炎ワクチンの約八十%のシェアを占めているのが某製薬会社の製品です。長年にわたる不正製造の問題でワクチン出荷の自粛が続いているため、定期接種となればワクチン在庫の不足から接種ができなくなることも考えられます。別の製薬会社がワクチンを増産することにより安定供給がされて、十月以降の定期接種に影響が出ないことを願います。

 また、B型肝炎ウイルスの遺伝子型分類には地域特異性があって、欧米やアフリカ由来の慢性化しやすい遺伝子型のB型肝炎ウイルスの成人感染者が日本でも近年急速に増加しています。国産のB型肝炎ワクチンは、これらの遺伝子型のウイルスについても一定の効果があると考えられていますので、今回の定期接種化は大変有意義であると言えます。