富田 広 外科部長
「広報せきかわ」2016年2月号より
温水洗浄便座で痔の症状緩和
皆様御存知の通称「イボ痔」は医学用語では「痔核」と呼ばれており、肛門が腫れあがり、痛み、出血、脱出、かゆみといった症状を来たす状態です。日本人の三人に一人が罹患しているとも言われる、一種の国民病です。医療機関では外科、消化器外科、肛門科といった診療科がその診療にあたっており、坂町病院では私共外科が診療させていただいております。
痔核を悪化させないようにするために日常生活で気を付けることとしては、便秘にならないようにする、排便時過度に息まないようにする、長時間の座位は避ける、刺激物の摂取を控えるといったことがあげられますが、その他に患部を清潔にする、こすらないようにする、冷やさないようにするといったこともあげられます。
ところで近年日本国内では温水洗浄便座が急速に普及してきており、日本における世帯普及率は内閣府の消費動向調査によりますと1992年に14%であったものが、2000年41%、2008年68%、2015年75%と増加しております。温水洗浄便座を使用することにより、従来のように排便後痔核に付着した糞便を紙でこすり取り、その際に粘膜を損傷するということが無くなり、患部も清潔になり、痔核の症状の緩和につながるのではないかと思います。 私は坂町病院に着任して十二年になりますが、外来診療をしていて、十年前と比べると痔核の患者さんがかなり減ったように感じています。その原因として温水洗浄便座の普及が大いに関係しているのではないかと考えています。また、痔核で外来に受診された患者さんもほとんどは温水洗浄便座未使用の方であり、使用している方は病院を受診するほど悪化しなくてすんでいるのではないでしょうか。
秘かに痔核でお悩みの方はたくさんおられるかと思いますが、もし温水洗浄便座を使用していないようでしたら、薬物療法を行う前に先ずは温水洗浄便座を使用してみることをお勧めいたします。(私は関連業者さんから宣伝するように頼まれたわけではありません)
ただし注意点としては、症状が軽快しない場合は「痔だと思っていたら実は大腸癌だった」ということもありますので、医療機関への受診が必要です。