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阿部栄一 薬剤師

「広報せきかわ」2015年3月号より

新薬の開発についてPTP包装シートの誤飲(ごいん)

  毎年、いろいろな種類の新薬が市販されています。今回は新薬がどのようにして開発され、市販されるようになるのか、その過程について簡単にお話したいと思います。

 最初は、目的とする、効果のある物質を探すことから始めます。それは広範にわたって収集され、数十万から数百万の化合物群のデータを作成します。この中からいろいろな識別・選択の手法を繰り返し用いて、新薬の候補と成りうる基本的化合物等を選び出します。さらにそれらの化合物に化学的修飾を加えた数千から数万の周辺化合物を合成し、その中から有効性・安全性の両面から最も適した物質を選び出します。これが新薬の候補(以下治験薬)となります。ここまでの過程を前臨床試験といいます。

 次の過程から臨床治験という、ヒト(以下被験者)を対象とした試験に入ります。最初は健康な被験者を対象とし、治験薬の安全性について試験を実施します。つぎに治療薬として対象となる疾患の、少数の患者さんを被験者とし、治験薬の有効で安全な投与量や投薬方法などを検証します。最後に多数の患者さんを被験者として、二重盲検法(心理的影響を排除し、薬の効果を公正に評価するため、医師および被験者に対して使用する薬が治験薬かどうか、わからない状態にして検証する方法)などにより、既存の薬と比較してその有効性・安全性について検証します。

 これらの試験すべてに対して良好な結果を示すことができた治験薬のみが、医薬品医療機器総合機構で新薬の適否についての審査を受けることができます。治験薬が新薬として承認され、さらに厚生労働省から製造・販売の許可がおり、ようやく市販できることになります。このように新薬開発の成功率は、数万分の1以下であり、また、開発に要する経費は数十億から数百億円、開発期間も最短で10年、長くなると20年くらいかかる場合もあります。

 今後、いま話題となっているips細胞の実用化が進み新薬の開発に利用されると、治療効果と安全性の高い新薬が開発され、さらに開発に要する経費や期間が大幅に軽減される可能性があります。治療効果が確実で、副作用のない、夢のような新薬ができるのもそう遠くない未来のことかもしれません。