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須藤 翔 医師

「広報せきかわ」2014年10月号より

増え続ける大腸癌。小さな傷で治せる手術法があります

 喜ばしいことに、私達日本人の平均寿命は順調にのび続けています。しかし高齢化が進むにつれ、増えている病気もあります。その代表が癌(がん)です。中でも、特に増加しているのが「大腸癌」です。現在、胃癌についで2番目に多い癌となっています。

 大腸癌は、進行してしこりが大きくなると、腹痛や便に血が混じるといった症状がでてきます。しかし、癌が小さいうちはほとんど症状がないため、なかなか気づくことはできません。癌を早期に発見するためには、大腸癌検診がとても重要です。

 大腸癌検診では、便にふくまれるわずかな出血(便潜血といいます)を調べることで、癌の可能性を判断します。この検査で「癌の可能性がある」と判断された場合には、大腸カメラで腸の中を観察し、癌が実際にあるかどうかを確かめます。ごく早期の大腸癌や、ポリープ(ほうっておくと癌になる可能性がある)は、大腸カメラを使って取り除くこともできます。もし、大腸カメラで取り除けない大きさの癌が見つかった場合には、手術を行う必要があります。

 大腸癌の手術は、以前はおなかを大きく切る「開腹手術」が一般的でした。しかし最近は、腹腔鏡(ふくくうきょう)という直径わずか5~10ミリメートルの高性能カメラを使った「腹腔鏡手術」が主流になってきています。開腹手術では見えにくかった細い血管なども拡大して見ることができ、こまやかな手術が可能となります。また腹腔鏡手術は、おなかに小さな穴をいくつか開けるだけで手術ができますので、痛みが少なく入院も短くなります。

 腹腔鏡手術にはさまざまな長所がありますが、現時点では、全ての病院でこの手術が受けられるわけではありません。特別な器具が必要ですし、手術を行う医師にもある程度のトレーニングが求められます。

 当院では、平成20年から大腸癌に対する腹腔鏡手術を行っています。もちろん、全ての患者さまに腹腔鏡手術が行なえるわけではありません。しこりが非常に大きい場合などには、開腹手術をおすすめする場合もあります。ですが、当院で今年これまでに行った大腸癌手術の9割が、腹腔鏡手術でした。

 患者さまのお体の状態は、お一人ずつ全て異なります。当院では、手術治療だけでなくお薬の治療もふくめ、患者さま一人一人に最適な治療を行うように、日々心がけております。