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新井 亜希  神経内科

「広報せきかわ」2014年8月号より

高齢者と薬剤、そして神経内科

 神経内科には、家族に付き添われた高齢者が「最近フラフラしている」、「ぼんやりして変なことを言う」などの相談のため数多く受診します。そして家族が「今、飲んでいるらしい薬です」と大きな紙袋いっぱいの薬を持参、苦笑いしていることが、たびたびあるのです。本人は「ちゃんと飲んでいる」と言うものの、何を、どれくらい飲んでいるのか説明できず、困った顔をしています。一方で家族は「本人に任せているから」と涼しい顔です。

 そんな時は三つの問題が起きていることが多いのです。一つ目は、安全な治療の大原則「薬をきちんと管理する(薬を決められた通りに飲む)」ということが守られていないこと。二つ目は、高齢者本人の「薬をきちんと管理する」能力が十分ではない(認知機能が低下している)ということ、そして、それを本人だけではなく家族も理解していない、認めようとしない、ということです。その結果、「薬の飲み過ぎや飲み忘れ」という危険な状態が続き、「フラフラする」などの症状が引き起こされることがあるのです。そういった場合は、薬をきちんと管理することにより、全例ではありませんが症状が改善することがあります。一人で身の回りのことを行える高齢者が、必ずしも薬の管理まで確実に行えるわけではありません。周囲の人はその点を理解し、配慮すべきです。

 三つ目の問題は「多種類の薬」です。高齢者の場合、投与薬剤が多くなりやすいことは事実です。厚生労働省の統計では、高齢者は平均4~5種類の薬剤を投与されていると報告されています。さらに、かかりつけ薬局を持たず、主治医にも相談しないまま、複数の医療機関から処方を受けている方が多いことも問題です。「投与されている薬剤の全体像を誰も把握していない状態」、つまり、「薬物治療の総合責任者不明のまま大量の薬剤が投与」され、全例ではありませんが副作用を生じて「フラフラする」こともあるわけです。診療している医師全員が情報を共有し薬剤を適切に調整することにより、症状が改善することがあります。どの医師に対しても遠慮なく申告・相談して下さい。加えて注意すべきことは、一見元気な高齢者も、加齢による身体機能の低下などのため薬剤の副作用が生じやすいということです。

 高齢者と薬剤の関係には、家族や医師、薬剤師など多くの人の協力と配慮が必要なのです。