近 幸吉 内科
「広報せきかわ」2014年6月号より
“地域医療研修”をご存知ですか?
最近、当院で若い研修医の姿をよく目にするようになったと感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。これまでの医師を育てる研修制度が専門科に偏りすぎていたとの反省から、平成16年4月より新しい臨床研修制度が始まりました。研修医は、この期間に(大学を卒業後2年間)、日常頻回に接する病気への対処、全人的な患者さんへの対応の仕方を勉強します。その中で地域の病院に出て在宅医療、離島医療などを勉強する約1〜3ヶ月間の研修が、“地域医療研修”と呼ばれ、必修科目となっています。
当院は、平成16年の制度開始時から県立新発田病院、新潟大学の地域医療研修を担当してきました。(平成20年より新潟市民病院が追加。)
当院では地域医療研修の目標として、
(1)坂町病院を支えてくれている福祉施設、調剤薬局の仕事を理解し実践する。
(2)院内で医師の仕事を支えてくれる各部署の仕事を理解し実践する。
を掲げています。特に(1)、(2)は今後医師として仕事をしていくにあたり支えていただいている院外の施設、院内各部署を半日〜一日実際出向いて経験してもらっています。退院が決まっても事情があって自宅に戻れない入院患者さんを引き受けていただいている長期療養型病院(肴町病院)、特別養護老人ホーム(たかつぼ)、老人介護施設(関川愛広苑)での研修は、治療終了後の長い療養生活を実際に間近で感じることで、その後の診療に対する考え方に大きな影響をもたらしてくれると考えています。
当院での地域医療研修の特色として、『ありがたい話』があります。『ありがたい話』は、医局すべての常勤医、各セクションの長が研修医と話をしながら30分程度お茶を飲む時間です。話の内容としては診療に関することでも趣味の話、おいしい料理屋さんの話でもよく特に限定はしていません。この業界の先達と30分間差しで話をすることが医師としての幅を広げてくれることに期待しています。
鮭の回帰率は、4年目の鮭を基準として0.5〜1.0%とのことですが、当地で地域医療研修を終了した研修医が、いつの日か三面川を遡上する鮭のように当地に舞い戻ってきて一緒に仕事ができる日を夢見て、今後も熱く研修医の指導にあたっていきたいと思っています。