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今田 研生 医師

「広報せきかわ」2014年1月号より

アレルギー児とペットの飼育

 気管支喘息児には食物や花粉、ダニやハウスダストなどにアレルギーがある者が多いですが、ペットとして飼われる犬、猫、小鳥、ウサギやハムスター等の小動物にアレルギーのある児も少なくありません。

 ペットの飼育率は地域差もあるようですが、ここ数年は不変または微増しているようです。多くのアレルギー児は既にペット抗原に感作を受けてしまっているので、その抗原に暴露されればアレルギー反応が起きて症状が悪化します。しかし、既に長年ペットを飼っていて、免疫寛容が成立している可能性が高い児ではペットを飼うことはあまり問題ないでしょう。

 では、まだペットに感作されていない児が新たにペットを飼うのはどうでしょうか?これまでペットを飼ったことがないアレルギー児が新たにペットを飼えば、感作を受けて将来ペットアレルギーを発症する危険があることを説明すると、その時点で多くの家族はペットを飼うのをあきらめます。一度飼ったペットは情が移ってしまうので、手放すことは難しく、アレルギー児であるとわかっても実際に手放すことはあまりありません。

 しかし、最近興味深い研究が外国から発表されています。出生時および出生後一年ほどの期間にペットを飼っていた家庭の子供はペットを飼っていなかった家庭の子供に比べてアトピー性皮膚炎や気管支喘息の罹患率が低いというデータです。つまり、ペットを飼う事はアレルギー発症の危険因子ではなく、むしろ予防効果があるかのような結果です。しかし、それぞれの研究の結果は必ずしも一致しておらず、男女差やペットの種類の違いなどで結果はさまざまです。つまり、子供の遺伝子の違いによってペットの影響は正反対の結果が出ることがわかってきています。ですから、ペットの飼育が一概にアレルギー発症予防につながるという期待はできないのです。

 将来的には患者の遺伝子解析を行ない、ペットを飼っても良い子供と飼わないほうが良い子供を区別できるようになるのかも知れません。しかし、現時点ではアレルギー体質の子供は各種抗原の感作を受けやすいことを考えて、アレルギー疾患を発症していなくてもペットの飼育はお勧めしないのが無難です。