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冨田 広 医師

「広報せきかわ」2013年11月号より

大腸がん検診の重要性

 現在大腸がん検診として一般的に行われている方法が便潜血反応検査です。これは大便の中に肉眼では確認出来ないような血液の混入があるかどうかを調べる検査です。大便は、スティック状の採便棒を大便に刺し込み専用容器に入れて提出します。この検査は人間の血液のみに反応し、たとえ生肉を大量に食べても検出されないしくみになっています。一般に検査の精度を上げるために「2日法」という日を変えて2回大便を採取する方法が行われています。

 この2日法で1回でも「陽性」つまり大便に血液が混入しているという結果であった場合は肛門からカメラを入れて大腸を調べる大腸内視鏡検査を受ける必要が生じます。統計的には便潜血反応検査2日法を千人に行うと、1回でも陽性となる人は50~60人、陽性となった人を検査するとその約半数に大腸ポリープが見つかり、さらに全体の1~3人に大腸がんが見つかると言われています。しかし、その見つかった大腸がんも約半数は早期がんです。早期がんの場合は、多くは大腸内視鏡で見ながら切り取る方法で治療が完了し、外科的手術を受ける必要はありません。

 なかには外科的手術が必要になることもありますが、大腸がんの手術も今や小さい傷で行う腹腔鏡手術が主流になっており、坂町病院でも大腸がんの手術の8割以上は腹腔鏡手術です。一昔前に比べると患者さんの負担はかなり軽くなっています。検診で見つかった場合は、比較的早期の段階のものが多い傾向にあります。早期のものであれば当然腹腔鏡手術で切り取ることができる確率が高くなるわけです。中には「単孔式腹腔鏡手術」という長さ約4㎝の傷を1か所つくるだけで切り取ることが可能なこともあります(写真参照)。

 以前からがんは早期発見、早期治療が重要と言われています。大腸がんは、進行の程度により治療の方法、その後の経過がまったく変わってきますので、特に早期発見が重要です。大腸がんの早期発見のためには、先ずは検診などで便潜血反応検査を受けるということです。しかし、進行大腸がんの2割、早期大腸がんの5割は便潜血反応検査で異常が出てきませんので、腹痛や便通異常のある人、血縁者に大腸がんになった人がいる人は、大腸内視鏡検査を受けることをお勧めいたします。



術中1 術中2 術後 術後