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大橋 拓 医師

「広報せきかわ」2013年8月号より

“胆石”あれこれ

 今回は、“胆石(胆嚢結石)”についてのお話しです。

 胆嚢は、お腹の右上側にある「肝臓」の下にへばりついた約5cmの洋ナシ形の袋で、肝臓で作られた消化液「胆汁」を貯めています。胆汁は、肝臓から出る際に直径6mmくらいの管「総胆管」1本にまとまり「十二指腸」へと流れ、腸で脂肪などを吸収するのを助けています。総胆管から途中で横に出る細い脇道があり、これが胆嚢へとつながっています。胆嚢は、食事しない時には胆汁を貯めて膨らんでいますが、食事した際には縮むことで貯めていた胆汁を十二指腸に流し、効率よく消化液を食べ物に混ぜる助けをしています。

 この胆嚢に石ができるのが“胆石”です。石は、胆汁の成分であるビリルビン(うんちの茶色のもと)やコレステロールが固まってできます。コレステロールの石は脂肪分・カロリーの高い食事などでできやすくなるといわれています。

 胆石もちの方の多くは無症状であり、症状のある方は100人に数人とも言われています。典型的な症状は、食事(特に油っこいもの)を食べた時に、石が胆嚢の出口につまり、胆嚢が無理して縮むことで起こる右上腹部痛“胆石発作”が有名です。ほかに、流れが悪くなりバイ菌がたまる“胆嚢炎”や、総胆管に石が落ちてつまる“総胆管結石”が起きることもあります。

 治療は、症状のある方を対象としており、手術とおくすりの二つがあります。おくすりの治療は、“ウルソ”という胆汁をたくさん出す薬(“熊の胆、くまのい”の主成分です)で胆汁の流れを良くし、胆石を溶かす方法ですが、一部の石にしか効かず、薬を休むと再発する恐れがあり、現在はあまり行われません。手術の治療として、胆嚢全体をとってしまう胆嚢摘出術が行われます。胆嚢は脇道で胆汁を貯めるだけなのでとってしまっても消化吸収には大きな問題はありません。胆嚢摘出術は、以前は右の肋骨の下を20cm以上と大きく切っていましたが、現在では1cm程度のキズが3-4個だけで済む腹腔鏡(カメラ)手術が全国で行われています。

 当院では、胆嚢摘出術を、以前この欄の「モーチョーの手術の進歩」でご紹介した“単孔式腹腔鏡手術”で行っており、ヘソ1ヶ所の穴から手術しています。技術的には少し難しくなりますが、手術後はほとんど傷が目立ちませんので患者さんにとっては良い方法ではないかと考えています。