浅野 良三 医師
「広報せきかわ」2013年5月号より
非結核性抗酸菌症
一度染色されると酸で脱色されにくい菌は抗酸菌と呼ばれ、最も有名な菌に結核菌があります。抗酸菌の中で結核菌群以外の抗酸菌を一括して非結核性抗酸菌(nontuberculous mycobacterium,NTM)と呼び、その感染症が非結核性抗酸菌症です。
NTMは土壌、水など広く自然界に生存しています。また、池、噴水、温泉水、一般家庭浴水及び循環風呂浴水など身近な生活水からも検出されています。
NTMは、結核菌群と異なり病原性が弱く、体の抵抗力の弱い人だけが感染する日和見感染と考えられていました。しかし、最近原因は不明ですが、健康な中高年、特に女性に感染者が増えています。
環境中の粉塵や水しぶきなどと一緒に菌を吸引するなどして、感染が起こると考えられています。
しかし、人から人への感染は起こりにくいと考えられていますので、感染者が排菌していても周りの人に感染することはなく、結核のように隔離入院をすることもありません。
最初は自覚症状のないことが多いのですが、進行すると咳、血痰、微熱等が主症状となります。他に体重減少、倦怠感、寝汗、息切れ、胸痛などが見られます。
胸部X線やCTと喀痰細菌検査で診断します。
治療は、抗結核剤と抗生剤を組み合わせて、1~2年以上続けます。その間、症状の改善、痰から菌が出なくなること、レントゲン所見の改善などを治療効果の目安にして治療を続けます。治療を終了した後も、再悪化がないか定期的に経過観察を行います。完全に治癒したとは言えませんので、できるだけ長い期間経過を観察します。