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近 幸吉 医師

「広報せきかわ」2013年4月号より

坂町病院と在宅医療

 地域の皆様におかれましては、日頃より坂町病院をご利用いただきありがとうございます。全国平均をはるかに上回るスピードで高齢化が進む当地域において今後は、ますます在宅医療の重要性が高まってくることは論を待ちません。

 当院では、平成8年4月より訪問診療を開始し年々件数も増加し平成24年度は、訪問診療担当医師も増員し月平均20〜30件の訪問診療件数を数えるまでになりました。

 診療所、病院から出向く医療には3つの形態があります。(1)自宅で体調が不良となり電話等で診療所に連絡が入り自宅まで出向き診療する(赤ひげの映画にでてくるような昔ながらの形態)往診、(2)交通機関の不十分な山間地に集落が点在し高齢者世帯が多く自家用車での通院もままならない地域で、集落センターなどに集落の住民に集まっていただいて診察、投薬を行う巡回診療、(3)寝たきり等の理由で通院が困難な方に対し、定期的に約束した時間帯に自宅を訪問し診察をする訪問診療です。

 最近、国は(3)の訪問診療を政策的にも強く推進しています。しかし、これは単に高騰する医療費を抑制するためだけではありません。平成19年度の内閣府の行った『高齢者の健康に関する意識調査』によると療養に関する希望では、約4割の方が自宅での療養を希望しており、終末期の療養場所(どこで看取ってもらいたいか)では、6割〜7割の方が自宅を希望しています。しかしながら現実には、在宅で看取られる方の割合は昭和26年の82.5%から平成21年には12.4%にまで低下してきています。

 このように在宅での療養率が低下してきた原因については内閣府の『終末期医療に関する調査』の通りです。(図1)今後、在宅療養を推進して行くためには家族支援の拡充はもちろんですが在宅医療・介護供給量の拡充、在宅療養者の後方ベッドの確保・整備、24時間在宅医療体制の構築が必須といえます。

 坂町病院は、平成24年12月に新潟県で第5番目の在宅支援病院として認定されました。現在、関川、中条愛広苑訪問看護ステーションと緊密に連絡をとりつつ24時間体制での訪問診療を開始しています。病院からの訪問診療は、重症呼吸不全の症例、中心静脈栄養などで栄養管理せざるをえない症例、血液疾患などで頻回に輸血を要する症例などなど重症症例への対応も可能であり、また急変時の入院も訪問診療医が主治医として継続して自らの病院で入院診療でき在宅からのスムーズな移行が可能です。

 これまで、当院から訪問診療を継続し最期在宅で迎えられた方々を思い出してみますと、どの方も親しい家族・親戚、近所のお茶の飲み友達に囲まれてとても安らかなお顔であったような気がします。人生の最後を、希望通りに慣れ親しんだ自宅で安心して過ごされることは“いい人生であった”というための最も重要な要因である気さえします。

 今後、坂町病院としては、住民の皆様にさらに質の高い、心のこもった医療を提供すべく精進して行く所存ですが、在宅医療もさらに拡充し地域の皆様のニーズに応えて行きたいと考えております。ご利用をお待ちしております。

在宅療養移行や継続の阻害要因