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冨田 広 医師

「広報せきかわ」2012年9月号より

モーチョーの手術の進歩

 以前この紙面で医学がどんどん進歩しているにもかかわらず、モーチョー(急性虫垂炎)の手術は昔とそれほど変わっていないということを掲載させていただきました。

 しかし、最近はモーチョーの手術も腹腔鏡手術の導入により大きく様変わりしてきました。

 急性虫垂炎の手術とは一般には右下腹部にある虫垂という大腸の突起部分を切り取る手術方法です。「腹腔鏡手術」とはお腹に1cm前後の小さい傷をつくり、その傷を通してお腹の中に「腹腔鏡」というカメラを挿入し、お腹の中の様子をテレビ画面に映し出し、さらにお腹の中に電気メスやハサミといった道具を挿入して内臓の手術を行う方法です。日本では平成三、四年から腹腔鏡を使って胆嚢を切り取る方法が行われるようになり、その後、手術器械の進歩などにより胃や腸の手術も腹腔鏡手術が行われるようになっております。現在坂町病院でも多くの患者さんの胃や腸の手術は腹腔鏡手術を行わせてもらっております。しかし、従来の腹腔鏡手術はお腹に3ヶ所から5ヶ所の穴を開けて行う方法であり、虫垂を切り取る手術でお腹に何ヶ所も穴を開けるのはいかがなものかと考え、あまり行っておりませんでした。

 しかし、手術器械の進歩により「単孔式腹腔鏡手術」という方法が開発され、これが虫垂炎の手術に導入されています。「単孔式」とは文字通り穴がひとつということで、お腹に1ヶ所だけ穴をあけて、その1ヶ所の穴からカメラもハサミも電気メスも全てお腹の中に挿入して手術をしてしまう方法です。1ヶ所の穴もヘソの中に傷をつくりますので手術後はほとんど傷が目立ちません。他に利点としては①従来の手術は小さな傷で手術を行うため虫垂以外の内臓に異常があっても分からないのに対して腹腔鏡手術ですとお腹全体の内臓が見えるため虫垂以外の内臓の異常もわかる。②太った人や重症の虫垂炎の場合はお腹を大きく切らないと手術ができないのに対して腹腔鏡手術ですと小さな傷で手術ができる。③手術後に傷が化膿することが少ない。④手術後の腸閉塞が少ないといったことがあげられます。

 複雑な手術器具の準備を必要とする、技術的に難しいといった欠点はあるのですが、患者さんにとってみれば大変良い方法なのではないかと考え、行っています。

術中1 術中2 術後