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五十嵐 仁 医師

「広報せきかわ」2012年8月号より

糖尿病と動脈硬化の話

 糖尿病は今も変わらぬ生活習慣病の代表選手の一つです。患者数が増えてきている、合併症が危ない、など病気は広く知られるようになってきましたが、残念ながら今なお患者数はのび続けています。

 糖尿病の厄介なところは、自覚症状が出にくいということです。かなり高い血糖値になれば、口が渇く、たくさん水を飲む、たくさんおしっこに行くなどの症状が現れますが、実際にはこのような症状を自覚して医療機関を訪れる方は少数派です。受診される多くの方は、健診でひっかかった、他の病気で診療所を受診したら糖尿病が見つかったなど、症状のない段階で発見されます。

 糖尿病は症状がないからといって病状が軽い訳ではありません。最近は、糖尿病の初期の段階やさらに耐糖能異常と言われる糖尿病になる前の段階が、もっとも動脈硬化の進みやすい時期であることが分かってきました。動脈硬化が原因の病気と言えば、脳卒中、心臓病ですね。一度発症すれば命に関わる病気ですし、助かったとしても後遺症を残すことがあります。また再発しやすいことでも知られています。

 ただ動脈硬化を起こす血管は体の中でも太い血管に属するため、よほど病状が進まないと最初の症状が出てきません。動脈硬化が完成して、病気を発症するまでには時間がかかるのです。だからこそ、日頃から健康に気遣ったりきちんと治療を受けることが大事なのです。いますぐ、今日からでも動脈硬化対策を始めましょう。

 糖尿病を始めとする生活習慣病にならないように、悪くしないように気をつけるためには何をしたらいいか。これはかなり知られてきていると思います。腹八分目の食事、一口30回かむ、毎日少しづつ体を動かす、タバコをやめる、塩分を減らす、家で血圧を測るなど。健康なうちから気をつければ、生活の制限は少なく、医療費は少なく、心身の状態は安定し、生きる喜びを長く感じられることでしょう。

 しかし既に病気を持っているとするならば、医師の診察を受けずに、薬の力を借りずに健康を維持することは難しいのが実情です。ためらわずに、適切な治療を受けて下さい。最近の糖尿病治療の進歩は目覚ましく、様々な薬が登場してきました。皆さんのライフスタイルにあった治療を提供できるようになってきています。糖尿病や動脈硬化は症状を出させては行けません。症状のない今だからこそ、治療を続け人生を楽しみましょう。