姉﨑一弥 医師
「広報せきかわ」2012年5月号より
鼻から、口から?
「鼻からの胃カメラでお願いします。」、「鼻からの胃カメラはないのでしょうか?」
時々患者さんから鼻からの胃カメラ希望がありますが、現在当院で行っている胃カメラは「鼻から」ではなく、主に「口から」です。鼻からの胃カメラは特殊な場合を除いて行っていません。鼻からの胃カメラは病院内に常備をしておらず、どうしても鼻からの胃カメラで検査を行わなければならない予定が入った時だけ、業者から一時的に借りて行っています。
それでは、「鼻から」と「口から」では具体的にいったい何が違うのでしょうか?
普段はなかなか皆さんにお話ができない、「鼻から」と「口から」の胃カメラのお話を今回簡単にさせていただきます。以前は胃カメラといえば、口からのものしかありませんでしたが、約10年前より鼻からのものが登場して拡がりつつあります。
「鼻からの胃カメラ」は咽頭(のど)刺激が少なく、ゲエーとかオッエ(嘔吐反射)となりにくい。また、検査中に会話することも可能でカメラの太さも5mm前後と細いです。「口からの胃カメラ」は咽頭刺激で嘔吐反射を来たしやすく、検査中に会話することは困難。カメラも鼻からのものに比べ2倍近い太さです。
ここまで読めば、絶対に「鼻から」が良さそうですが・・・・。
現在のカメラは先端にCCDレンズという画像を電気信号に変換する電子部品が組み込まれたものであり、その電気信号を介してテレビモニターで観察しています。また、鉗子口という小さい穴から処置具を入れての検査・治療も可能です。したがって、カメラの太さを細くすればするほど全体の性能を犠牲にしなければなりません。カメラを使用して治療を行うことも多い病院では、日常より詳しく正確な診断と高性能カメラが必要となります。
近年は胃ポリープ、早期胃癌、総胆管結石などはカメラでの治療が最初の標準的治療の時代となっています。昔であれば開腹手術となった病気でも、体表に傷痕を残さず低侵襲で治療ができるようになったことは大変すばらしいことです。胃カメラの検査時間は約5~10分ですが、現在も多くの病院で胃カメラを「口から」行う理由をご理解いただけたでしょうか。
余談ですが、通常胃カメラ検査は胃だけではなく、咽頭、食道、十二指腸も併せて観察を行っています。