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五十嵐 仁 医師

「広報せきかわ」2011年8月号より

尿酸値が高いと死亡率が上がる? ~尿酸の話~

 みなさんは尿酸というとどのような事を思い浮かべますか。「痛風」「足がはれて痛い」「尿管結石」「ビールや日本酒を飲むと尿酸値が上がる」といったところでしょうか。

 痛風とは、足の親指の付け根が腫れ上がり、激痛が走り、足が腫れ、歩く事にも支障を来す病気です。

 一方で、「尿酸値が高くとも何ともない」と思われている方も多いと思います。実際のところ、尿酸値が高いからと言ってすぐに症状が出る訳ではありません。それでは尿酸が高いだけという状態は、何か問題があるのでしょうか。治療を受けなければならない事なのでしょうか。

 実は最近、尿酸値が高いだけで死亡率が上がる事が分かってきました。尿酸値の高い状態では全身の血管に炎症を起こします。その結果、血管が広がりにくくなり血圧が下がりにくくなります。すなわち、高血圧を引き起こしやすくなるのです。また、筋肉の血流が悪くなる結果、糖尿病や高インスリン血症も発生しやすくなることが分かっています。脂肪組織にも炎症を起こさせ、健康ではない脂肪が増えます。高血圧、糖尿病、脂質異常症と生活習慣病やメタボリック症候群で聞き慣れた病名が出てきました。尿酸値が高い状態が続くと、生活習慣病やメタボリック症候群を引き起こしやすくなる事が分かってきたのです。

 高尿酸血症は腎臓病も発症しやすくします。尿酸は腎臓からしか排泄できません。腎臓では尿酸が濃縮されて結晶ができやすいのです。結晶が成長し、はがれて尿中をただようと尿管結石として激痛を起こします。はがれなくても腎臓のあちらこちらで結晶ができる結果、尿が流れにくくなり腎臓はどんどん弱っていきます。知らないうちに腎臓障害が発生し、気づいたら透析が必要な状態だったということもあります。

 それでは尿酸を上げないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。ビール、日本酒以外のアルコールならば大丈夫と考えやすいのですが、プリン体を含有していないアルコールでも尿酸値を上げる作用があるので過飲は禁物です。プリン体を多く含む食品(肉・魚の内蔵類、干物など)の食べ過ぎにも注意が必要です。果物のとり過ぎも尿酸値を上げる原因になります。一方で水分を多くとる事は、腎臓から尿酸を出しやすくしますのでよい事です。このような生活上の注意をしても尿酸値が下がらないときは、尿酸を下げる薬を飲む事をお勧めします。尿酸値を下げる薬は、血圧も下げてくれますよ。