田中 亮 医師
「広報せきかわ」2011年6月号より
腹腔鏡手術とは
最近の医学の進歩によって、手術技術がますます向上してきています。患者さんの体の負担が少しでも軽くなるような手術方法が行われるようになってきています。そのひとつに、腹腔鏡手術というものがあります。
『腹腔』とは『おなか』のことを意味します。腹腔鏡の『鏡』とは『カメラ』のことです。腹腔鏡下手術では、腹腔鏡と呼ばれる細長いカメラを『おなか』の中に挿入し、テレビモニターに『おなか』の中を映し出し、そのモニター画面を見ながら手術を行います。狭いところや直接見えにくい場所を腹腔鏡でよく観察しながら、細長い棒のような電気メスや鉗子(かんし)を用いて、ふだんの開腹手術と同じように悪い臓器を切除したり、縫い合わせたりします。
最大の特徴は体への負担が少ない手術であることです。傷が小さく美容的に優れているだけでなく、術後の痛みが軽く、早期の離床が可能です。さらに、開腹術と比べて腹腔内が空気にさらされないため、腸のダメージが少なく食事を早く始められたり、癒着しにくく腸閉塞症になりにくいなどの利点もあります。これらによって、入院期間の短縮、早期の社会復帰が可能になりました。
しかし、腹腔鏡手術は誰に対しても行えるとは限りません。心臓や肺の機能の落ちている方や手術既往のある方では適応にならないこともあります。また、開腹手術と比べて操作性が劣ることから手術難易度が高くなるため、手術時間が長くなったり、大出血への対処が難しくなることもあります。したがって、すべての患者さんにとって有用であるわけではなく、あくまで、従来から行われている開腹手術を選択するよりもメリットのある患者さんが対象となります。
県立坂町病院では原則として学会で示されているガイドラインを遵守しています。胃癌に関しては基本的に早期胃癌を対象としていますが、内視鏡(胃カメラ)で切除できる早期癌は内視鏡切除を優先します。大腸癌では、一部の直腸癌を除く殆どの早期・進行大腸癌が対象になります。他の臓器に癌がくい込んでいる場合や腫瘍径が大きい場合は対象外となります。その他、胆石症や腸閉塞の癒着剥離術、小腸切除なども行っています。
県立坂町病院では、腹腔鏡手術だけでなく、従来の開腹手術も同様に高い知識・技術レベルを維持するよう努力しています。どうぞ御気軽に相談ください