浅野 良三 医師
「広報せきかわ」2011年3月号より
肺がんについて
肺がんは近年急速に増加しており、日本では1998年以後、がんの中で死亡原因の第一位を占め、年間7万人が肺がんになり、6万人以上の方が亡くなっています。
症状としては、せき、呼吸困難、胸痛、血痰などが認められますが、無症状のことも多く、早期発見には定期的な検診が重要です。最近CT検査による検診が注目されており、胸部X線写真では発見できないような早期の肺がんも見つかっています。
検診方法として、胸部X線写真、重喫煙の方には痰の細胞診断、CT検査が行われています。診断は主に気管支鏡と呼ばれる内視鏡を用いてがん細胞を採取します。同時に全身検査を行いがんの進行度を調べます。
治療方法は非小細胞がんと小細胞がんに分けて、進行度によって決定されます。非小細胞がんの場合は、早期に診断された場合、外科的切除により高率に治りますが、最近では負担が軽い胸腔鏡(内視鏡)による手術も行われています。どちらの手術法がよいかは、肺がんの大きさや進行度、肺がんのできた部位により異なります。手術ができない場合も、早期であれば粒子線治療や放射線照射で治すことが可能です。一方、遠くの臓器への転移やリンパ節転移のある進行したがんでは、放射線照射や抗がん剤の投与で、症状の改善と、ある程度の延命効果が期待できます。
しかし、進行肺がんについては、現時点では、治る方の割合は多いものではありません。近年、分子標的治療薬と呼ばれる新しい薬が開発さ れ、人によっては劇的な腫瘍縮小効果と延命効果が得られています。東洋人、女性、非喫煙者、腺がんの方に効果が現れやすいことがわかっています。さらに肺がん細胞の遺伝子検査で遺伝子変異のある方に効果がみられることも分ってきました。一方、喫煙者、扁平上皮がん、男性では効果が乏しく、間質性肺炎の副作用がでやすいことが知られています。また、肺がんの発生に喫煙が強く関与することが証明されており、現在、最も重要な肺がんの予防対策は禁煙の徹底です。 いずれにしても、喫煙は今すぐ止めることが推奨されます。(日本呼吸器学会ホームページより)