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近 幸吉 医師

「広報せきかわ」2011年2月号より

年をとってご飯が食べられなくなったらどうしますか?

 私は胎内市(旧黒川村の関川村よりの小長谷という集落)の生まれです。私が、子供の頃は年をとって寝たきりになりだんだんご飯を食べられなくなってくると近くの板谷越先生や関川村大島の富樫先生が往診に来てくれました。2、3回点滴しても回復してこないと『老衰』という病名のもと、孫、子を含む家族はもちろん、近くのお茶飲みの友達の皆さんにも温かく見守られて『この世にさよなら』をしていたように思います。

 現在では、その頃に比べて医学も格段に進歩しこれまで不治と思われていた病気もかなり治るようになってきています。しかし、残念ながら不老不死の特効薬はまだありません。人間である以上は癌や突然の血管閉塞(心筋梗塞など)、事故などは免れても、いずれ老化により食べられない状態となる可能性があります。

 私は、坂町病院でこういった高齢者の摂食障害に対してリハビリ、薬物療法(最近では高血圧症、パーキンソン病のある種の薬に嚥下改善作用が報告されています。)を積極的に取り組んできました。時に信じられないくらいの改善効果で経口摂取が可能となり退院して行かれる方もいます。しかし、残念ながら効果が認められない方も多数いらっしゃいます。こうした場合、現在では胃に内視鏡下でチューブ(胃瘻と言っています)を取り付けそこから流動食を入れる『経管栄養』といった栄養方法をとることが多くなってきました。私も、多い時は、週に4〜5件の胃瘻造設術を行っています。

 しかし、この胃瘻を作っていて“この治療を、本当にご本人が望んでいるだろうか?”といつも疑問に思っていました。この疑問を晴らすため平成12年度、平成22年度の2回にわたり近隣の福祉施設、病院の協力を得てアンケート調査を実施してみました。結果は、別紙グラフの通りでした。すなわち、10年前も今回も変わらず口から食事が摂れなくなった場合、 “外来患者さん、福祉施設のスタッフ、病院のスタッフとも7〜9割の高い割合で自分自身は積極的な経管栄養の導入を希望しない”との結果でした。

 以上の結果を踏まえて今後は、

 (1)ご本人の希望を反映させてやるシステム作り

   (2)摂食障害の終末期を看る体制の整備

が、摂食嚥下リハビリ、薬物療法とともに重要になってくると思います。

 (1)としては紙に書いて意思表明をしておく、かかりつけ医・家族にそういった場合の自分希望を告げておくなどがあげられます。

 (2)としては施設、病院内に癌のホスピスに準じた摂食障害の終末期の部屋を作る、(在宅を希望される方に向け)在宅での支援体制をさらに充実させる、などが取り組むべき課題と考えます。

 今後、坂町病院として、摂食嚥下障害に対して、これまで以上にリハビリ、薬物療法を充実させることはもちろんですが、(1)、(2)に対する取り組みをさらに進め、住民の皆様個々の希望に沿う形の在宅医療を含む医療のご提供に努め期待に応えていく所存です。