鈴木 薫 医師
「広報せきかわ」2011年1月号より
メタボリックシンドロームとは
皆さんはメタボリックシンドロームと言う言葉をご存知ですか?新聞等で取り上げられる事も多く、健康診断でもお腹の周りの長さ(腹囲)を計られた方も多いと思います。しかし、メタボリックシンドロームの詳しい内容や何故悪いか?等をご存知の方は少ないのではと思われます。
メタボリックシンドロームは内臓に溜まった脂肪(腹筋の中の脂肪:内臓脂肪)が色々な臓器に悪さをする病気です。内臓脂肪が一定量以上溜まると脂肪細胞も肥満となり、体に悪さをする物質を出す様になります。一般的に腹囲が男は85cm以上、女は90cm以上になると内臓脂肪量が限界を超えて溜まっている場合が多いと言われています。腹囲は内臓脂肪と皮下脂肪(腹筋の上にあり摘める脂肪)からなっています。皮下脂肪が多ければ内臓脂肪が溜まっていなくても腹囲は大きくなります。皮下脂肪が少ないと腹囲は正常でも内臓脂肪が溜まっている場合もあります。女は男よりも皮下脂肪がつきやすいので腹囲の基準が男より大きくなっています。人種により皮下脂肪のつきやすさが異なる為、国により腹囲の基準が異なります。ですから腹囲の基準のみを問題にする事に意味がない事をお分かり頂けると思います。
一般的に高血圧、高脂血症、糖尿病等は別々の病気であり、各々の病気を治療しなければなりません。これらの病気が重なると動脈硬化が進みやすくなり心筋梗塞や脳卒中に普通の人の何倍も罹りやすくなり、また重症になりやすいと言われています。一方、メタボリックシンドロームでは内臓脂肪が溜まる事により高血圧や糖尿病、脂肪肝、動脈硬化が起こる為、内臓脂肪を減らせば全て良くなる可能性があり、将来、心筋梗塞や脳卒中等になる危険を減らせる可能性があります。その為、最近、健康診断等でメタボリックシンドロームの指導が厳しくなっている訳です。
内臓脂肪を減らすにはどうしたら良いでしょうか?腹八分目と毎日の散歩が一番です。散歩は1時間すれば最も良いですが、忙しかったり、脚が痛くて長く歩けない人等では10分前後でも結構ですからこまめに歩いて下さい。歩く事により筋肉がつき、脂肪が燃えやすい体質に変ります。歩く事により動脈硬化や将来の寝たきり生活の予防になります。足腰の筋肉がつく事により腰や膝の負担が減り、腰や膝の痛みが軽くなる事もあります。
正月のご馳走を控えめにし、暖かい時間帯を選んで散歩をしましょう。自分の健康は自分で守るものです。