最終章


「犯人は・・・ぼくだ!!」

真理が
きょと〜んとしてぼくを見た。

ぼくも
きょと〜んとしている。

『おかしい・・そんなこと言うはずじゃなかったけど・・
まあ、これも展開のひとつということで・・』

「あんた・・いい加減にしなさいよ・・!!
主人公が犯人だなんて!!
しかもずっと一人称で話進めてきたじゃない!!」

「ほら、エンゼルハートとか・・じつは自分が犯人だったって事、
映画とか小説で結構あるじゃない!!
なんつったって意外性があっていいよね!!」

真理は、もう付き合ってらんないという
あきれた表情でぼくを見た。

真理の前でつい、いい格好を見せようとして
探偵気取りで犯人を当てようと思ったのだが・・
完全に的はずれな推理となり、嫌われたようだ。

『もう犯人なんてどうでもいい!!
真理と一緒にいられれば・・
恋人同士になりたいなんて贅沢な事は言いません!!
ぼくはSMプレイの奴隷役になっても構わない!!
ああ〜〜っ!!真理さまっ!! そんな目で見ないで!!
一生おそばに置いてえええ〜〜〜っ!!』

真理に突っ込まれたり、どつかれたりしているうちに
どうやらぼくのマゾ心が目覚めてしまったようだ・・

おわ・・・り?



そのとき・・・


神社の中から不気味な声が聞こえてきた・・

「フォッフォッフォッ・・・さすがはぼくだ!!
するどい推理力だな!!」

「はあっ・・・!?」
ぼくと真理は唖然として神社の方を見つめた。
神社の戸が・・ぎぎぎ・・と開いて中から現れたのは・・・



「ぼ、ぼくだ・・!! ぼくの目の前に
ぼくが2人!!
「ちょっとこれ・・どういう事なの!?!?」

「忘れてしまったのか?・・3年前の事を・・
きみたち出演者撮影スタッフはこの島に特撮ドラマのロケに訪れた。」

「ドラマ名は・・『ウルターマン』 サブタイトル・・『侵略者を打て!!』
透、キミは・・宇宙忍者バルタン星人(ほしびと)の役だったね」

そうだ!!思い出した!! ぼくはそのバルタン星人の演技が評判で、
その後『帰ってきたウルターマン』『ウルターマン80』にも出演する事になったんだ!!


「そしてあのロケのとき・・キミはウルターマンと闘う際、得意の分身戦法を使った・・」
「設定上で言えば残像を利用した、めくらましなのだが・・」

「いや〜〜・・ぼくは小さい頃から分身が得意でね。
だからこそ、ドラマのオーディションにうかった訳だけど・・
(たまに幽体離脱とか言われる事もあるなぁ・・)
あの時は調子がよくて、勢いで2体も出ちゃって・・
あれ〜〜っ!? するとキミたちはあの時の・・・!?」

「そう・・キミの体から分かれた分身だよ!!」
「ぼくらはあのときのロケが終了した後・・この島に取り残されて
しまったのだよ・・!!」

「うわぁぁ〜〜っ!! ごめ〜〜ん!! うっかり体に戻すの忘れてしまって・・
どうりで帰る際、忘れ物をしたような気がしたんだ・・」

「うっかりですむかぁ〜〜っ!!
ぼくたちは島に取り残されたのち、3年もの間この島で暮らし続けたんだ」
「いつかおまえたちに復讐することを誓って・・!!
そして、ついにその時が来たのだ・・じわじわと周りの連中から消して恐怖を与え、
そして最後におまえたちを血祭りに・・フォッフォッ・・」


「おいおい・・帰りたかったら、さっさと定期で来る送迎船に乗って
帰ってくればよかったのに・・
それに、実行するのに3年もかかるなんて、計画練りこみ過ぎだよ・・
・・いや・・そのわりにはトリックも何もないが・・
『推理しろ!!でないと殺される!!』というキャッチフレーズだったわりには
さしてトリックのないホラー物で終わってしまった
テレビドラマのようだなぁ・・

「何言ってるのよ!! 犯人もあてずっぽうで言う透くんの分身に
そんな緻密なトリック殺人とか考えられるわけないでしょう〜」

ぐさっ・・!!

「う、うるさいっ!! トリックなどなくても復讐は成り立つのだ!!・・・汗」
2人の分身は突然ぼくに襲いかかってきた!!
巨大なハサミのような手を振り上げて・・

「うわああっ!! ばかなぁ!! 分身が本体を殺そうとするなんて!!
そんなことがあっていいわけが・・!!」
ぼくは抵抗したが、2人の力にかなう訳もなく・・
「うぐぐぐ〜〜〜っ!!やめてくれ〜〜っ!!」
ぎりぎり2人のハサミがぼくの首と胴体を締めつけ・・
次第に意識が・・・

そのとき!! かん高い叫び声が聞こえた!!

「くらえっ!! 八つ裂き光輪っ!!」

「ぐわわあっ!!」「ぐわわぁっ!!」「ぐわわあっ!!」

真理が光輪をすばやく振り投げるポーズをとり叫んでいた!!
そして次に左右の腕をクロスして・・

「とどめだっ!! スペシューム光線っ!!
しゅぴ〜〜〜〜〜っ!!!!」

「ぐぎゃああっ!!」「ぐぎゃああっ!!」「ぐぎゃああっ!!」

2人の分身は苦しみのたうち、ぼくの上に重なり倒れてきた!!
ぼくも同時に苦しみもがき、ついにその場で倒れ気を失ってしまった・・・
そしてどれくらい時間がたったのであろうか・・
気が付くと、真理が目の前にいて・・心配そうにぼくを見つめていた。

「気が付いたようね」
「あれ・・分身の2人は・・!?」
「透くんの上に重なって倒れた後・・あなたの中に戻ったみたいよ・・」
「た・・助かったぁ・・いや、真理に助けられたのか・・」

3年前・・真理はウルターマンのスーツアクターをやっていた。
鳩胸で肩幅がありスレンダーな彼女はウルターマンの体型にぴったりだったのだ。
その際、ぼくはバルタン星人に扮していたのだが・・
CGとはいえ、八つ裂き光輪で真っ二つにされた上、
体に火薬を取り付け、スペシューム光線を受け大爆発!!・・というハードな撮影は
今でもトラウマとなっていたのだ・・

半濃く島の海岸・・

海中から送迎船スティングレー号が浮上してきた。
そして収納ハッチが開き、中から現れた1台のパトカーが波止場をゆっくり前進してくる。
ようやく警察のおでましか・・・
いくら孤島とはいえ、殺人事件がおきてるんだぞ・・
翌日到着とはお役所仕事だな・・』



ふとそのパトカーの運転席に目をやると・・
「あれっ!? 誰も乗っていない・・!?」

「トランスフォーームっ!!」
ぎこぎこぎこっ・・



「うわわっ!! サイバーなおまわりさんっっ・・!!」
ぼくたちは今までの事件のすべてをその警官に話した。
現場検証後も、犯人については信じてもらえなかったが、
真理の証言と分身の実演によって、ようやく納得したようだ。

がちゃっ!!

警官はぼくが実演で出した2人の分身に手錠をかけた。
「あ、あの・・その2人逮捕するんですか!?」
「当然だ!! 罪を償ってもらわねばな・・」

分身たちがぼくの元に戻ってくるのは何年後のことになるのであろうか・・
まさか死刑になるなんてことはないだろうか・・
ぼくは分身を置いてきぼりにした自分にも非があると感じ、
うしろめたい気分になった・・。
『もしも自分が分身の立場だったら・・』

「また3分の1人前になっちゃったわね・・
分身たちも償いが終わったら戻ってくるわよ。
1人前の俳優になるのを目標にこれからも仕事にがんばりなさい!!」

真理が今までになく明るい声でぼくを励ましてくれた。
「よぉ〜〜し!! がんばるぞぉ〜〜っ!!
あれっ!? そういえばキヨさんの姿が見えないけど・・
一体どこにいったんだろう・・!?」

「誰だ?そのキヨさん・・というのは?」
警官が不思議そうな顔でたずねた。

「世羅月館を管理している老人ですよ!!
こんな腰の曲がった・・・」

「う〜〜ん・・そんな管理人いたかなぁ・・
あの館には何十年も昔から人は住んでいないはずだが・・」
「ええっ!?!?」

キヨさんは・・・昔、あの館で不幸な日々を送ったクリスタルむすめの
成れの果て・・自縛霊だったのだろうか・・?
それとも、まったく異次元から来た謎の使徒!?
あの異次元を切り裂く現れかたと、夕食に出された食材がいまだに気になる・・


その夜・・・某市 鏡町に続く暗く陰気なトンネル・・・

バイク宅配便の龍騎太郎(仮名)は憂鬱な気分であった。
「このトンネル・・・地元では有名なんだよなぁ〜〜
老婆の幽霊が出るって・・くわばらくわばら〜
早いとこトンネル抜けないかなぁ〜〜」

そのときっ!!

ドォ〜〜〜ンっっ!!!!!!

突然何か重いものがバイクのフロントガラスに落ちてきた!!

「うわぁぁああああ〜〜〜っ!!!!」




なんと!! 老婆の上半身がバイクの上にしがみついているのだ!!!!

「すんません・・すんません・・
ちょっと道を間違えまして・・」

そう言うと、老婆は次元の裂け目に消えていくかのようにフッと姿を消した・・

「今のは・・夢!?!? ・・いや、俺は確かに見たんだ・・!!」

汗びっしょりになりながら、龍騎太郎(仮名)は先ほどの出来事を思い返していた。
気を紛らわすためにラジオをつける。
早口で聞き取りづらいが、夏になるとよく聞くおなじみの声が流れてきた。

「実はあたしの友人から聞いたんですがね・・・
某市 鏡町に通じるトンネル・・そこの話しです。」

トンネルの出口はまだ見えてこない・・
まるでこの闇が永遠に続くかと思われるほどに・・

おわり


しおりの色が赤く変わって・・次回・・




「あかいたちの夜」
・・・なんてのはやりません・・・

あかもハズレじゃ〜〜〜っ!!
あかいDVDもぉ〜〜っ!!