◆サンダカン八番娼館 望郷 (1974年 121分)


第4回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した女性史研究家の山崎朋子の原作をもとに、社会性と叙情性を併せもつ作風で知られる熊井啓監督が映画化した作品。かつて東南アジア各地へ身を売られた「からゆきさん」と呼ばれる女性たちがいた。多くは貧しい家庭の出身であり、またその犠牲者であった。日本の近代化の裏にひそむ悲劇的存在ともいえる彼女たちを、映画は大きなスケールで見つめ直し、〈生きた存在〉として映しだしていく。目的を伏せて調査をする若い研究者と「からゆきさん」だった老婆との触れあいを通して、現在と過去を交錯させながら物語は進行していく。なかでも老婆サキを豊かな存在感で演じた田中絹代にとっては、この作品で受賞した国内における各種の主演女優賞、ベルリン国際映画祭主演女優賞がその長い女優生活の最後の受賞歴となった。「キネマ旬報」ベストテン第1位。

[スタッフ]
(原作) 山崎朋子
(脚色) 広沢栄
(脚色・監督) 熊井啓
(撮影) 金宇満司
(照明) 椎葉昇
(録音) 太田六敏
(音楽) 伊福部昭
(美術) 木村威夫

[役名(キャスト)]
北川サキ (田中絹代)
その少女時代 (高橋洋子)
三谷圭子 (栗原小巻)
おきくさん (水の江滝子)
竹内秀夫 (田中健)
サキの兄 (浜田光夫)
   母 (岩崎加根子)
娼館主人 (小沢栄太郎)
呉服屋 矢島 (砂塚秀夫)
農業試験所員 (中谷一郎)
ペナンの女 (菅井きん)